さよならの朝に約束の花をかざろう

2018年3月1日と14日にシネマシティで観ました。

鑑賞直後の俺のTwitterを見返すと震えていると書いてあるし、たぶん今もう一度観たら震えて劇場を後にすると思います。

つまりはひとこと素晴らしかった、みんな観ようぜと言えればそれで満足なんですけれど、ならばどう素晴らしかったかを書きなぐってみようということです。ラストまでネタバレだぜ。

そもそも昨年末の時点で予告編はさんざん観ていて、ファンタジーっぽいビジュアルだし苦手そうなジャンルだな、という印象でありました。空とかめっちゃきれいだけどふわふわしたキャラだし別れの一族云々言ってるし受け入れられるかね……みたいな。

それが前述の通り震えるしかなくなったので手のひら返し、すげえナニコレ傑作だよ魂に来たよってなもんです。というか予告からこんな話は想像できなかった……という意味では予告編詐欺ともいえるし上手い予告編だなってなります。

すんごい誤解を生むような書き方をするしかないのは語彙力のせいだし主語がでかくてご容赦なんだけど、とても女の話だと思ったんですよ。これは男の俺には絶っっっっ対に分からんって畏れてるんだと思うよ。

序盤、殺されてなお産まれた赤ん坊を離さない母親だったりその指を一本一本折って離して赤ん坊を継ごうとするマキアの描写でもうつらい。すごい……って。理屈の上では死後硬直だろうけれど母親の意志なのだろうし、いま思い出しながらキーを叩いてても半泣きですがな。

というように序盤でもう持っていかれてるんだけど、農場で飼ってた犬が亡くなるシーンの辛いこと。どうやったって自分よりは先に逝ってしまうって分かってはいるけど、分かってはいたけど亡くなるのはとても辛いんだよねって。これは俺が実家にいた猫が亡くなった時にもう30歳になろうかというのに声出して泣いて仕方がなかった体験があるのだけども、身内亡くすのも初めてだったし。

なんか今書いてて、男の俺には絶対分からんとは言いつつ、自分の人生に引き寄せて受け止めちゃうんだよなあって思った。かこつけて自分語りがしたいだけかしら?いいや続ける。

マキアは助けたエリアルをなんでかんで育ててって、覚束ない抱っこの仕方だったのがしっかりしていくのがもう良い。とても良い。エリアルが男の子なのでかわいいときはかわいいで済みつつ俺にもまあ年頃の描写が思い当たる節はあるけど、エリアルの場合はもうちょっと濃い。描写だけだったらひとり立ちしていくのもよーくわかる、男子たるもの自立を目指して親から離れていくんじゃ(主語でかい)、ってみえるけどエリアルの場合はちょっと濃い。例えばこのお話を中坊の時に観たらエリアルは恥ずかしくて直視できなかったかもしれないけど、おっさんになった今ではあんなに可愛かったエリアルが大きくなって……なんて風に観られるので人には観るべき時があるんだろうと思うよ。あとたぶん無いとは思うけど父親になったら、子供を育てていたらマキアもエリアルもどう見えるだろう?って。自分の人生に引き寄せて観ているせいか、人によって見え方が違うと思うので自分が獲得しえない感想を色々聞いてみたくなるです。

で、ディタなんですよ。出産。すごい。エリアルを見つけた時のリフレインでマキアが産気づいたディタを見つけるこの流れですよ。序盤の頼りない走り方が力強くなってるし、エリアルは戦ってるし。男の俺には絶っっっ対適わない凄みがここにあるんですよ。ディタに寄り添うマキアの力強いことといったらないもの。戦ってるエリアルが血を流して人が一人死んで、ディタが血を流して人をひとり産んで、ちょっともうここは観ないとわからんと思うけどもうここは言葉が見つからない。感動というならそうだし圧倒されたといったらそうだし、すごい……ってなってた。城が落とされてる一晩の出来事なんだよなと2回目に気づいたくらい。切りあってたり砲撃したり城が崩れてたり大スペクタクルポイントだった気がするけど。序盤のエリアルとの出会いがここで次に継がれる、時の流れも血の流れも日々の流れも繋がっていくんだと。俺はここから嗚咽であります。劇場で声が出そうでめっちゃ堪えた。

しかしここで終わらない。レイリアとクリムに触れないまま来たけど、マキアの話に織り込まれるもう一つのお話が(うまいこといった)あって、こちらは演技が素晴らしい。表情が声が悲痛でもうね……。でもレイリアは、あの跳んだ一瞬でメドメルに手向けられる全身全霊の母親だったと思うしメドメルに通じて少しでも報われてよかったってなるけどこの一連もテンションが高くて嗚咽であります。

もうラストはあの小さくて指を握ってた手が皺の寄る手になってて、人ひとりの人生を人生に寄り添ってお別れするって想像するしかないのだけど、きっとタンポポが咲いて綿毛を飛ばしてまた新しく芽吹くように、人も繋がって別れていくんだという感じでとても優しい幕引きだと思いましたしこの辺はスクリーンがマトモに見えてねえよ。

そんなこんなでエンドロールで余韻に浸りつつ、しかし感情を押さえられない状態で劇場を後にしなきゃいけなかった作品でした。言っておくが泣ければいい作品かというとそんなことはねえぞ主義者なんだけど、わりと正直に状態を書き記したらこうなってた。しかも作中にまだもっとあれやこれやあるんだけど書ききれない。

そんな素晴らしい映画でしたよ。